組合の意義

 

 労働組合は、労働者が自主的に労働条件の改善など、経済的地位を向上させる目的で組織される団体です(労働組合法第2条)。

 ひとりひとりの労働者は、賃金などの労働条件で不利益を被ったり、雇い止めにあったりしても、企業などの雇い主(使用者)と対抗できる力がありません。労働組合を通じて労働者が団結することにより、使用者と対等の立場で交渉し(団体交渉)、使用者とのあいだで労働条件に関する取り決め(労働協約)を結ぶことが可能になります(労働組合法第1条)。

 労働組合を結成し(団結権)、団体交渉をおこない(団体交渉権)、ストライキなどの争議をおこなう権利(団体行動権)は、日本国憲法第28条でも保障された、日本国民の権利です(労働三権)。また、使用者は労働組合との団体交渉を、正当な理由なく拒否できません(労働組合法第7条第2項)。

 このように保障されている権利であっても、実際に行使しなければ意味がありません。たとえ良心的な使用者であっても、労働基準法など労働条件に関する法律を、つねに守れているとは限りません。また、労働基準監督署などの官公庁が、多数ある事業所における法律違反をひとつひとつ確認し、是正を求められるわけでもありません。

 法律違反に限らず、労働者が自分たちで労働条件の改善を使用者へ求め、みんなで働きやすい職場をつくるためにも、労働組合の組合員になることに意義があります。働くうえでの悩みや不満を共有し、風通しのよい組織風土や職場環境を築いていくことが、安心して働ける活力ある組織の原動力となります。

 

過半数代表との違い

 

 常時10人以上を雇用する事業所は、所定の事項について、働きかたのルールである就業規則を作成のうえ、労働基準監督署へ届けなければなりません(労働基準法第89条)。使用者は就業規則の作成や変更にあたって、「労働者」の意見を書面で添付して、労働基準監督署へ提出することが定められています(労働基準法第90条)。「労働者」と鍵括弧つきで記した理由は、これに該当する「労働者」に2つのパターンがあるためです。

 ひとつは、該当する事業所で働く労働者のうち、半数を上回る労働者を組織する労働組合(過半数労働組合)です。過半数労働組合であれば、就業規則の作成・変更を届けるにあたって、意見を述べることができます。たとえ労働組合があっても、労働者の過半数を組織していない場合は、どのように「労働者」の意見を提出すればよいのでしょうか。

 この場合は、もうひとつのパターンである、過半数労働者を代表する者(過半数代表者)の意見を提出することになります。過半数代表者は意見を述べることはできますが、労働組合と違って、団体交渉をおこなう権利が保障されていません。意見を述べるにとどまらず、「労働者」としての交渉力を高めるためにも、労働組合の組合員を増やすことが求められています。

 なお、労働基準法第32条に定められた時間(法定労働時間。原則8時間/日、40時間/週)を超えた時間(時間外労働)や、法定休日(1週間あたり1日、もしくは4週間あたり4日)に使用者が「労働者」を働かせるためには、「労働者」と使用者とのあいだで協定を結び、労働基準監督署に届けなければなりません(労働基準法第36条、いわゆる「三六(さぶろく)協定」)。この場合も過半数労働組合が組織されていない事業所は、過半数代表者と協定を結ぶことになります。ちなみに、過半数労働組合、あるいは過半数代表者からの意見の提出を義務づけている法律は、100以上あるとされています。